三月二七日
大祭もいよいよ今日で終わりになりますが、毎日同じような話をするんで……聞く人は変わっていても、こっちは変わらないからね。今日は少しばかり変わった話もしましょう。
今年の課題としては、たびたび言う通り自然農法ですね。二、三日前の晩のラジオで、広川農林大臣の話に、ちょっとこっちの……「特集号」を見て、だいぶ刺激されたと思うような点があるんです。というのは、大臣が言うには、これから硫安は使わないようにしたほうが良い。それで、自給肥料ですね。自給肥料を大いに利用しなければいけない。と、こう言うんです。自給肥料というのは、つまり堆肥のことだろうと思うんですね。それはオワイも自給肥料ですがね。それの意味じゃないと思います。堆肥のことを、堆肥と、あまりこっちの説に共鳴するように見られるのも、ちょっと躊躇して……それで自給肥料と言うんだろうと思います。で、農林大臣とも言われる者が、硫安をやらないようにして、自給肥料をやらなければいけないと言うことは、よほど心境の変化がみられるんですね。それから、もう一つは虫害ですね。虫害は、どうも薬剤が適切でない……と、だからこれから薬をやるにも、害虫駆除に適当したようなのを工夫してやらなければいけない。と、こういうことを言ってますが、これも薬にばかり頼るなというような意味も含まれている。それから、農林大臣の、この間の話があったんですがね……ちょうど一〇日ばかり前の話ですがね、なにかの機会に話したんですが、それは忘れましたが、これからはできるだけ地力を出さなければならない。地力というのは、地の力ですね。これを出さなければいけないということを言っている。これも私が言っている、いままで土を殺していた。だから土自体の力を出さなければいけない。ということと合っているんですね。だから少なくとも広川さんはよほど共鳴しているということは認められるんですね。もっとも、去年の「特集号」のときも、その後私の説に共鳴している点もあったんですがね。それはごく微弱だったんですがね。今年はだいぶ強く言うんですね。だから、なかなかあの人も頭の良い人だと思われるんです。もっとも……まあ、提灯持つわけじゃないが……あの人は、元非常に苦労してますからね。鉄道工夫までやったというんですからね。だから、そういう人の頭というのは、非常に良いところがあるんです。そうでないと、学問……大学を出て役人になっていると、どうも……一種の、心の中に捕らわれたものがついているから、解り悪いんですが、かえっていろんな苦労した人のほうが、あらゆる方面に、かえって頭が働くというわけですね。
それから『結核信仰療法』という原稿は、もうできましたからね。これから印刷にかかるわけですよ。両三カ月のうちに出版するわけです。これは、新聞広告を続けてやるようにして、それから無論主なる方面ですね。大病院とか大学とか、そういう方面にも全部配るつもりです。それから、英文に訳して外国の大学、新聞社、病院とか、そういう方面にも配るわけです。で、いま結核というのは、日本ばかりでなく、なかなか外国も負けないですね。近来アメリカなんかが非常に結核が増えたということは、この間も言いましたがね。で、昨日の新聞かラジオで、ストレプトマイシンが……インドから、あっちの方面に非常に大きな注文が来たということを言いましたがね。ですから、アジアの……中央アジアの方面も、結核が非常に増えてきたものとみえますね。今度はインドのなんとかいう博士ですが……インド人でね……これが、日本のストマイの製造が優秀だというんで、今度教わりに来るんですね。そういうこともありましたね。そういうくらいですから結核革命療法なんていうのは、大いに注目されるだろうと思うんです。
それからその他に、今年の著しいのは箱根の神仙郷ですね。あれがいよいよ完成になって、そうして美術館は六月一五日に開館式をやろうと思ってます。この間も……数日前見ましたがね。だいぶ予想よりも、かえって良くできたくらいで、私も非常に満足してますがね。なにしろいろんな方面……美術のね。できるだけあらゆる種類を網羅して見せようと思ってますからね。階下の左手は徳川時代……桃山から徳川期の屏風類ですね。陶器類、巻物類……そういう物を陳列するつもりですからね。それから掛物なんかも、ふつうの美術館なんかと違って、どこまでも床の間というような気分を出そうと思ってね。壁は全部砂壁にして、天井もやっばり砂にして、鴨居は檜の一寸五分のを通して、その裏手に蛍光灯をずっとやろうと思っている。ですから、掛物なら掛物ですね。それを、平らにずっと照らしますからね。天気の悪いときでも良く見えるわけですね。そうして下の框という、あれはラワンという木ですが具合が良いんですよ。ずっとやって、高麗縁の茣蓙ですが、床の間にやるやつですが、それをずっと敷きつめて……ちょうど床の間という感じを出すつもりです。そういうようなやり方は、いままでの美術館なんかにないですね。手がまわれば、所々に花でも生けてやろうと思ってます。そこまで手がまわるかどうか分かりませんがね。あと、日本の陶器類ですね。それから右手のほうは現代美術ですね。これは二部屋ですが、部屋が小さいので、現代美術の絵画ですね。明治以後の絵画、彫刻、蒔絵、陶器と、だいたいそういう物を……まあ油絵も少し出します……日本のね。これは優秀品ばかり集めたつもりですから、そうとう注目されるだろうと思います。ちょっと見られないような物がいろいろ出てきますからね。いま、現代の美術家で、こういう良い物を作ったのかというような、そういう物もありますからね。それから二階は、左手は大広間になってますが、これはだいたい、東山時代ですね。足利時代から徳川末期までのいろいろな種類を集めたり、東山水墨、琳派物ですね。光琳、宗達、乾山……そういうものだとか、浮世絵の肉筆物ですね。それから、もし並べることができたら、書のものですね。歌切れと言ってましたが、平安朝時代の歌ですね。そういうものもできるだけ並べたいと思ってますがね。それから、蒔絵類。蒔絵は特に良い物を寄せ集めてあるつもりです。それから二階の右手のほうの部屋は支那のですね。朝鮮も少しは入ってます。支那、朝鮮と言うけれども、たいした物はないんですね。まあ陶器が主ですね。あとは銅器ですね。それが少しと、そういうものと絵画ですね。絵画はだいたい宋元時代のを主にして、あとは明が少しありますがね。それから書もそこに出したいと思ってますね。つまり宋時代の偉い坊さんの書いた物で、それはすばらしい物です。お茶のほうでよく使いますね。利休なんていうのは、お茶の会をするときに、必ずそういった物をね。だいたい宋元時代の書と、大徳寺の系統の偉い坊さんの……一休とか沢庵とか、大燈とか……開山のね。また、そういうのを非常に好む人がある。それから、一番奥の部屋は、ごく古い、天平から藤原までの、これは多く仏に関した物ですがね。仏画、仏像。仏像にも銅と木彫、乾漆ね。そういうもの。それから仏器……仏の器ですがね。それから経文ですね。それから仏教に関した絵巻物……そんなような物を出すつもりですがね。ですから、この間展覧会があった、興福寺にあった乾漆の仏の良いものですが、そういうものも出ます。とにかく種類はおそらく日本一だと思いますね。で、美術館はそんな具合で、それから……なにしろ必ず評判になってたいへん来るだろうと思います。だから、その設備をしなければならないんで、外人なんかもたくさん来るでしょうから、自動車置場なんか必要なんです。で、公園の角と、神仙郷の角と、渋井さんの家のあそこと、前の『光』社の出張所ですね。三尋木さんが住んでいた所、あそこが四つ角になってますね。公園の角は地面が低くなっているんですね。そこを埋めて、自動車の置場にしようと思ってね。というのは、神仙郷の角のほうのあそこに宿舎がありますが、あそこを取り払って、そこに……表に面した所ですね。ちょうど、渋井さんの所……美術館のほうに曲がる所に、切符売場を作って、その後ろを休憩所ですね。これは、美術館というものは、後ろをゾロゾロ来られては落ちついて見られないですから、どうしても人員を計って、ゆっくり見られるものを作りたいと思う。それには二、三百人くらい入れるようなものを作らなければならない。それで、あそこがちょうど良いので、そういう設備にするつもりです。
それから話は飛ぶけれども、神仙郷というのは地上天国の模型ですね。そういう目的で造ったものなんです。本当言うと本山がなくちゃならない。で、本山を造るべく、ケーブルを越えて半町ばかり行くと、左手にツツジをたくさん植えてある所がありますが、あそこが約一万坪あるんです。これは前に……三、四年前に手に入れてあった所ですがね。だいたいそのつもりで買ったんですがね。その時分は非常に安かった。そこはホーロクを伏せたような、実に穏やかな良い山なんです。その両方に谷川みたいになっている。そのまわりが流れているんです。その後ろのほうが杉林ですね。そこに白亜の殿堂ですね。そうすると実に美観が、なんとも言えないですね。青い森の前に、白い家ですからね。で、その建築は熱海の今度のメシヤ会館とはまるで違う様式ですがね。私はなにかやるのに、早いうちから、頭にできちゃうんですね。だから本当に間怠っこいようですが、その代わり見当は良くつくんです。で、その殿堂は一万人入るつもりです。全部椅子にして一万というんですから、これはまだ日本にはないですよ。日本で一番多く入るのは、浅草の国際劇場というのがありますが、あそこが五〇〇〇人ですから一万人というのはぜんぜんないんです。そうして周囲の平地ですね。それも非常に拡いですから、全部で二万や三万は充分入るつもりです。そうしてその辺りも、ただ殿堂を建てるばかりでなく、地形が具合が良いので、別な……庭園式にしますがね。ちょうど地形も実に具合が良く、前のほうがずっと低くなっていて、そこは去年五〇〇〇坪ばかり手に入ったので、そこには宿舎を作るつもりです。これは、宿屋に泊まらなくても良いように、各県別とか会別にして、何軒も作るわけです。これは天理教でやっていますが、やっぱりそれをまねしたわけですね。そんな具合で、本当の本山ができるわけです。
で、名前は「光明台」とつけましたからね。その光明台のそこが、ちょうど東と西の問ですね……箱根の山の上になる。要するに東と西というのは、経と緯なんですからね。東が経で西が緯なんです。東が火で、西が水なんです。ですから経緯結びの中心ですね。それが箱根になってますからね。つまり霊的に言えば、世界の真ん中に光明が現われたということになるんですね。
それで、そこに行くには、ケーブルを越えなければならないですがね。いまのところは、道がないですね。線路を越さなければならないので、危なくてしょうがない。自動車はとても行きませんしね。そこで、いまの公園と旅館の倉田の間の道ですね。ちょうど、埋めようという所辺りから、地所を下げて……往来を下げて、ケーブルの下にトンネルを作ろうと思っている。これから始めますがね。あそこを調べると、トンネルはわけなくできるんです。ケーブルの所は土が高くなっていますからね。で、割合に……私はもっとおおげさだと思っていたら、良く聞いてみると、ケーブルからは土は四尺あれば良いんですね。すると、あとはトンネルができる。鉄筋の柱をやって、セメントをやれば、もうできる。だから、今度はトンネルを、トラックでもバスでもわけなく通れるようになる。その出た土を、いまの自動車置場に埋めようと思う。一石二鳥なんですね。まあ、時節に応じていろいろそういった工夫が出てくるんですがね。それは神様がちゃんと用意してありますからね。実に、地形なんかもうまくいくんですよ。そうして強羅の公園ですが、あの通り汚くて、公園でないとは言えませんよね……ちゃんと公園になっているんだからね。実にポロ公園で、しようがないから、あれも私のほうでこしらえてやろうと思う。もっと、純西洋式に、つまりガーデン式にね。つまり神仙郷が岩だらけの、どっちかと言うと日本式のような支那式のようなので、そこで公園のほうは純西洋式にやろうと思っている。あれはもっと地所が拡くなるんですよ。片っ方の……私が埋めようという所は、まるで藪になってますからね。そこをすると拡くなります。そうしてできるだけいろいろな花を植えて、ちょうど噴水がなかなか立派ですからね。いまのところは開店休業という様子です。水は出ますがね。最初はきれいだったんですよ。あそこいらをすっかり整理して、そして箱根は気候が寒いですから、どんな花でもといかないが、あそこに適したものを大いに植えて、美観を呈しようと思う。そうして美術館に行った人が、どうしても……混むときは一時間以上待ちますから、その間公園を散歩するというように、こっちで役に立てようと思う。で、公園も教団で利用するのと、会社でもそこの旅館でも、たいへんに良いですよ。それは旅客がちょっと散歩しようとしても、いまではなんにも見る所がないんですからね。今度は美術館ができると、たいへんな魅力になりますね。それこそ旅館が援助しても良いくらいです。そんなような具合で、外人なんか非常に喜ぶだろうと思ってます。公園をこっちで本当にやるとすばらしいものになりますよ。なかなか地形なんかもおもしろいですからね。そうして、私は公園に面したほうの、茶席の拡い所ですね。そこをすっかり整理して……この間も行ってみましたが、方々できました。土は少し斜面になって、できるだけ岩を少なくして、土ばかりにしようと思う。それにモミジを植える。この間行ったら三〇〇本買ったそうですがね。なるべく大きい、枝の下に張ったものを択れと言ってきました。そうして、みんな紅葉するのと、しないのがありますから、紅葉するのを集めるようにと言っておきましたがね。そこで、秋は真っ赤になるわけですね。そうして下の土は真っ青にしようと思う。それには青苔が良いですからね。去年京都の苔寺に行ったとき、ははあ、これはおもしろいな、こっちもどこかにやってみようと思ったんですが、ちょうどモミジの所は良いんです。苔寺のほうは三十幾種類あるといばってましたが、なに、もっと種類を多くしようと思っている。で、信者さんの中で、自分の所に……庭にあるとか、近くにあるとかいう苔を採集して持ってきてもらいたいと思うんです。それはまだ、いまじゃないんですから、早くて入梅あたりか……たぶんそのころだろうと思いますがね。それは持てるだけで良いですからね。みんなその土地の苔を持ってきてもらう。それで、全部私がこしらえようと思う。これは、苔の種類が多いのでは日本一で、それは植物学の評判になりますよ。苔を研究するなら箱根のあそこに限るとね。そうすると、紅葉と苔との対照が非常に良いと思う。で、いまの宿舎の所から太鼓橋のようなものを掛けてね。いま橋の形なんかも考えてます。調和するようなうまいものをこしらえようと思っている。それから流れを、美術館の横手のほうに上って行く、穏やかな流れにして、両側にモミジを植えようと思っている。それからあの辺一帯秋の感じが、大いに出るつもりです。で、萩の道も、もっと延長しましたからね。萩の道もずっと良くなる。萩とモミジですね。そうして大いに秋の感じを出そうと思ってますがね。
箱根はそのくらいにして、熱海のほうは、いまどなたでもみんな見ているでしょうが、ツツジ山ですね。あれはだいたいできましたがね。あれも最初ツツジを二〇〇〇本植えるつもりだったところが、二〇〇〇本じゃとても足りない。あそこに取ってあったのが六〇〇本あったが、それでもまだまだ足りない。それで今度は一〇〇〇本買いました。三六〇〇本ですね。やっぱりミロクですね。箱根のツツジも三六〇本。こっちが三六〇〇本。それから梅が結局三六○本になります。やっぱり、ミロクにどうしてもなっちゃうんですね。だから、三六〇〇本一山に植えると言うから、とうてい日本のどこにもないに決まっているからね。あれは将来日本の名物になって、一遍は日本中の人が必ず見にきますですね。それからメシヤ会館ですが、会館もこの間技師が図面を持ってきました。どうも気に入らないのです。どうもああいう人たちは、これ(鼻)がありますからね。だから、こっちが言っても、その通りに、なかなかやらないです。やっぱり自分の個性を出そうとする。その人は芸術院の建築のほうの受賞者になった吉田五十八という人です。とにかくあの人は柔術学校の教授で、今度の美術賞をもらうくらいですから、設計家としては日本一ですが、けれどもこの人は日本建築を研究しているんです。その点に私とちょっと食い違う。私はずっと新しいところを狙ってますからね。外国よりか新しいものを狙っている。だから食い違う。でもあの人は新しいほうです。日本の新人でね。歌舞伎をやっているくらいですからね。私のほうが異っているので、先のほうが異ってくるんですね。私はどうも解らないから、先生一つ画いてくださいと言うので、よろしいと言って、今度図の専門の者を呼んですっかり命じましたからね。お気に入るまで何回でもやりますからと言うので、今度は気に入ったものができますがね。そうしたら見せます。これは、そうとう良いと思うんです。で、メシヤ会館はだいぶ拡くなったので、結局椅子席が二〇〇〇人はできます。それからまわりの廊下に立ったのが一〇〇〇人くらいできますから、三〇〇〇人くらいは大丈夫、収容できますね。それより多くなったら、外の回廊が六尺幅で、ずっとコンクリートになりますから、そこにもそうとう立てますから、なんだかんだと五〇〇〇人くらいは収容できますね。その代わり、外に廂を作らなければならない。屋根がなくちゃいけない。そこで硝子の廂でずっと取りまく……四十何間の硝子の廂ができる。しかしいま硝子は非常に進歩してますから。間数の長いのは平気ですよ。どのくらいでやれますか……とにかく長さ三〇間までやれるんですからね。新しい硝子の設備は最近できたんです。網硝子ですがね。玄関は三間四方くらいの天井にするつもりです。硝子の廂でね。いろいろの点は……なかなか難しい点なんです。そういうのは、いままでだれもやったことがないんですからね。宗教建築じゃないからね。耶蘇教式……キリスト教式のものをやるなら、いままでできているからわけないんですがね。こっちは余興もやらなければならないから、舞台の設備もやらなければならない。舞台というのは娯楽で、拝むというのは宗教ですから、なかなか苦労がいるんです。外郭も、いまの吉田という人のは、ちょうどいまの……現代人の感覚なんです。私のほうはもっと先ですからね。先方のは、いくらか劇場的気分があるんです。私のことを言うと、私のは銀行式になっちゃうと言うんです。そんなような具合で、銀行式とか官庁式とか映画館式と言う、それを避けなければならないので、外郭が難しいと言うんですがね。それもちゃんといくつもりです。それから展望台なんか、いろいろお話がありますが、これはこの次にして。
そんなことをいろいろ言うと金はたいへんかかりますよ。ところがこれは、信者さんはきっと心配するだろうと思いますがね。これは、心配御無用で良いんです。なかなか……それに、金に苦しむとか、心配すると地獄ですからね。やっぱり、天国を造る宗教が、地獄の苦しみをしては逆ですから、神様はそんな気の利かないことはしないから大丈夫です。と言うのは、たいてい知っているでしょうが、鉱山のほうがうまくいったんです。すばらしい脈をぶち当てたんです。これも不思議なんですね。私が去年一遍水上温泉のある水上に行ったところが、あそこに……温泉に行ったんじゃない……山を見に行ったんです。そのとき、昔見つけた所で、二、三寸幅のしみったれな……まあ鉱石は良いんですが……細いですからね。これから下に行くと拡い所があると言うんで、下をやらせようと思ったところが、昔……二、三十年前に掘ったことがあるんです。何人かやって、全部そこで失敗し身上をつぶしたという話が村人の間にあるんです。それで、下に一〇間ばかり行くと、五尺の六尺の、五六と言って……これは立派な坑道です。それで掘ったところが駄目なんで、力尽きて止めちゃったんです。で、私の見当では、そこをもう一息寄れば、ぷつからなければならないというので、やらせたんです。四、五尺行くとパッと当たったんです。骨というものの、一つの神秘性があるんですね。その当時にもう四、五尺掘ったら、たいへんなことになったんです。そこで力尽きたんです。神様はうまくね。見本の石は一尺ないくらいですね。五、六寸で、ほとんど金属ばかりでね。なにしろ七貫八百匁ですからね。なんと言っても金ばかりですからね。鉛と亜鉛と銅ですね。ふつう鉱石というのは、鉱石の間に金があるものです。良い物でそうなんです。ところがこっちは、金の間に石があるんです。この間、神岡鉱山というのがありますが、あれは日本一の鉛、亜鉛の山ですからね。そこの技師に見せたところが、日本一だと折り紙つけましたがね。私なんかも、見たこともないし、想像もつかない石で……あまり良いんでね。四月一日からここの所に飾りますからね。今度来れば見られますがね。それはたいした物です。これは鉱山の知識のある人が見たらびっくりしますよ。
ところが、そういうすばらしい所をぶち当てて……まだたいして深く掘りませんが、だんだん深く掘ります。それは竪坑を掘るように準備してます。量も、私の鑑定では一万トンは大丈夫だと思ってます、ところが、すぐ売ったら金になるかと言うと、金になるけれども、たいへん損なんです。先に良いように儲けられちゃうんですね。つまり鉱山会社のほうにね。というのは、そういうのはどんなにでもごまかせるんです。だから、どうしても分析して、つまり選鉱しませんと非常に損なんです。銅はいくら、鉛はいくら、亜鉛はいくらと分離して、その分だけ売ると、非常に儲かって、先も面倒臭くないものだから、先も喜んで要求してくる。だから、そういう選鉱機が必要なんです。それも去年買ってあるんです。まだすっかり組み立ててない。少し足りない部分があるので、それを至急注文して、それを据え付けて、運転ができるようになるのは、どうしても一、二カ月かかるんですね。それまで鉱石は掘って溜めておくんですがね。いま、銅だけならすぐに売れるんです。選鉱しなくても良いんです。下に行けば銅があるんです。こう下に行くのと、他のほうで銅の脈があるのがありますから、そこを掘らしてますがね。そうすれば、じきに売れるんです。
ここでちょっと話したいことは、鉱山学と私のほうは異うんです。いまに私のほうになりますが……これはやっぱり医学と同じですよ。鉱山学は幼稚なものです。時間がないからざっと話しますが、鉱山学というのは、岩に亀裂がありますね。そうすると地から鉱液というのが自然に発生すると言うんです。鉱液というのは、鉱物の液体ですね。それが岩の亀裂に入って鉱物になるという学説なんですね。ところが、馬鹿馬鹿しい学説でね。そんな……地から……まるで地に鉱物の製造工場があるみたいです。もっとおもしろいのは、交替鉱床といって、鉛のほうがどこかに行って、銅のほうが地から出てくると説くのです。そんな馬鹿なことを言っている。だから鉱山の技師がいくら探鉱しても、成功するわけがないんです。電気探鉱をやれば良いですがね。電気探鉱はまだ日本では不可能です。石油とか鉄とかいうのは良いですが、銅、鉛というのは電気探鉱は駄目です。じゃどういうわけで鉱物ができるかと言うと硬化作用です。土が硬化して石になる。石が硬化して金になる。金のうちでも、硬いのと軟らかいのがありますから……鉛なんていうのは、充分硬化してないのです。亜鉛が硬化して銅が発生してくる。硬化作用ということを、鉱物学は知らないんです。ですから仮に、粘土が硬化したものが鉛になるんです。良く似ているでしょう……鉛と粘土はね。それから赤土が硬化したものが、褐鉄鉱ですね。茶色の鉄鉱です。それから、赤土でもない、粘土でもない、白土がありますが、それが硬化すると鋼が発生するんです。その硬化作用ということを知らないからね。そこで、圧力の強いほど硬化作用が強いので、山の中央の下が硬化作用が強いから……いま掘っているんですがね。鉛、亜鉛の山でも……今度竪坑を入れてやってますが、ちゃんと合ってます。私が言う通りやると、ちゃんとなる。だから、鉱山のある所なら成功しますよ。原理はいまの浄霊と同じですよ。たいへん時間が経っちゃったね。もっと話したいことがあるが、いずれだんだん話します。
お祭り中は浄霊しないつもりだったんですが、非常に期待して来た人が多いんで、ぜひやってくれと言うものですから、やることにしましたがね。多いから時間がいつもの倍くらいかかりますから、二〇分くらいかかりますからね。