これが宗達(上の間のお掛軸)狩野派以前の足利時代のです。
〔 質問者 〕宗達のこういう図柄は珍しいんでございましょうか。
いや、もっと小さいんです。博物館のなんかも、もっと小さいんです。
〔 質問者 〕これは鷺の実物大と同じですか。
そうですね。……もう少し小さくて、ぞんざい……簡単に書いたほうがいいですね。
〔 質問者 〕観山亭にいまおかけになっておられる書のお軸は。
西山という人です。大徳寺の坊さんです。大徳寺の坊さんでは開山が、この人が一番うまいです。高いんです。横文字で字が小さいんです。ごく安いんで五〇万ですかね。五〇万でないですね。ついこの間来たのが八五万と言う。洗ったか、なんかしてはげているのが、それで八五万。少し大きいんですが、それが一七〇万。あんまり良いんじゃないが、預っているが、どうしても、値段出しきらないですね。百二、三十万ならするでしょうね。一休が一番良いですね。一休のは二、三百万するですね。それから沢庵ですね。一休が一番うまいんです。その次が沢庵で、その次が西山ですね。
〔 質問者 〕良寛は。
良寛は安いんです。良寛なら五、六千円。私がこの間買った良寛の絵ですが、一万円です。姓名入りで一万円で買った。西山と玉室という人と四人ですね。一休はなぜ一番かと言うと字としては、一番まずいんです。西山のほうが一番うまいです。ところが、自然のままに書くから、そこが良いですね……明らかで。西山なんか、うまく書こうとするので、そこに臭味があるですね。
〔 質問者 〕鉄舟なんかはずっと落ちるんですか。
鉄舟なんかずっと落ちますね。鉄舟だったら、一〇〇〇円か二〇〇〇円です。
〔 質問者 〕道風は高いですね。
道風は高いですね。あれは、一行いくらと言うんですからね。それに表装がつくんですからね。三万くらいするでしょう。ちょっとしたので、三〇万くらいするでしょう。ここにきてから、うんと高くなった。道風と西行だね。
〔 質問者 〕第三次戦争が始まると、ずっと下がりますか。
どうですかね。殊によると、上がるかもしれない。高くなりましたよ。すばらしく高くなった。私は、以前買ったのはずいぶん儲ります。一番なのは、終戦明くる年買った、光悦の画像で六万円というのを買ったが、いま、二〇〇万円でも売りません。日本の歌の、色紙ですね。いまアメリカではちょっと良いのは一〇万で買います。五万以下はないです。信綱の三十六歌集と言って有名ですが、三十六枚ある。だいたい色紙ですがね。業平とか小野小町とか書いてある。墨絵では、牧谿と梁楷と二つですから。牧谿でいいものは、二つばかりあるんです。なにしろだんだん高くなっているからね。だから贋物がずいぶんあるんですよ。だから、ああいうものを、手に入れるのはなかなか苦心惨憺します。それから、目がきかなければ、相場がありますからね。おっかぶせよう、おっかぶせようと言う、詐欺師みたいですからね。いま、まず道具屋の勉強して卒業するまでに一〇〇〇万円払わなければならない。買いそこないですね。やっぱり、自分が買わなければ本当じゃない。やっぱり自分が買わなければ、深刻にはね。私は終戦時分から買いました。ただ、表装が良いんで買ったというのが、ところがみんな、それが良いものです。おそらく私みたいなものはないと思います。このごろ、めったに買わないんです。終戦後買ったのは安いんですからね。良いものが出て、それで安い。
足利義政が宋元時代のものを輸入して、これをみんなに、絵書きに書かした。と言うが、絵書きをつくったのですね。そういう名人ができて、それが狩野派と言うんです。
〔 質問者 〕巨勢金岡と申しますか。あれは。
あれは仏画のほうです。仏画のほうはまた違う。あれは坊さんが書いた。坊さんにも、うまいのがあります。いま、仏に関するものは安いんです。だから私は、それを買っているんですが、足利時代ですね。徳川時代になると、ずっと違いますからね。見られたものじゃない。私くらい目のきいているのはないだろうと思います。なぜなら、道具屋は、茶器なら茶器だけで、専門的になっていますからね。ところが、私はなんでもだいたい判りますからね。だから、私くらいあらゆるものを見る者はないと言ってました。