昭和二十五年一月二十日 講話(18) 光録16

〔 質問者 〕消極的借金はいけないとの御教示をいただきましたが、借金しなければならず、またその仕事をやめるわけにもいきません場合、御教えをどのように考えるべきでしょうか。

 これはね、最初出発がよければいいんですよ。出発が悪いからこうなるんです。その仕事の出発がごく確実ならそんなことはないんです。不確実なのに手を出すからこうなるんですよ。だからたいていの場合は止めて出直せばいいんですよ。

 それからね、人間はたいていだれでも自分の仕事が成功する場合だけしか考えないもんですが、成功だけじゃなくて失敗した場合のことも考えに入れるべきですよ。そういうふうにすればきっと大丈夫ですよ。ところがふつうの人のやるのを見てると実に甘いんですよ。(笑声)……まったく、みんな成功だけしか考えないんですからね。(笑声)だから、私は三段構えってことを言うんです。例えば借金なんかでも、「返すころにはこっちから金が入るはずだからそれをまわして返済しよう」と思っていても、たいていは期日までに入らないもんで、そこでボロが出てしまうんですよ。だから、返済にまわすべき金が甲から入らないときには乙から、乙も駄目なときには丙を……というふうに三段構えにしておくことですよ。だから私はいつでもきちんと期日に金を払えるんですよ。けど、いつもあんまり金払いがいいもんだから、あすこにはいつでも金があるって思われてしまうんでねえ。(笑声)

 私はよく言うんですよ、商売と心中しちゃいけないってね。商売してても、それがいけないときにはいつでも別れられるようにしておくことですよ。駄目ならいつでもよせるようにしとくといいんですよ。そういうふうにしておくと、千変万化の行動がとれますからね。商売と心中するようになると致命的ですよ、再び立つ能わずって状態になりますからね。

「『御光話録』十六号、岡田茂吉全集講話篇第二巻」 昭和25年01月20日