昭和二十三年十二月二十八日 御講話(8) 光録(補)

 〔 質問者 〕慈悲は正義の裏づけが必要と存じますが左の項目において慈悲と正義との関係につき御指示をお願いいたします。
 キリストの「人若し汝の右の頬を打たば左をも向けよ」との無抵抗主義。

 ほー慈悲の解剖ですか、……これはいいでしょう、これくらいの心持ちなら間違いはない。これがいいんだがなかなかできないんですよ。大本教祖の出口なお刀自は、人が金を貸してくれと言えばすぐ貸してやる。先方がいい人か悪い人か、すぐ返すか返さぬかなんかには頓着せず、貸してやったことも忘れてしまうのです。これはいいが現実問題としては無理です。殊に個人ならいいが国家の間では成り立たない。国土を半分とられて、ではこっちも……というわけにはゆきませんから。だからキリストの言ったような心持ちでいればいいのです。そして臨機応変にやってゆけばよろしい。戦時中滅私奉公とよく言われたが、これはウソで、私を滅してしまってはオジャンです。滅するのではなく犠牲にするのならいいのですが。

「『御光話録』(補)(年代不詳1951頃)、岡田茂吉全集講話篇第一巻p」 昭和23年12月28日