昭和二十三年十二月二十八日 御講話(13) 光録(補)

〔 質問者 〕孔子の正義を貫く行動の弱さがその生涯の不遇を招き、支那民族を弱くしたのではないでしょうか。

 孔子のため支那民族が弱くなったとは言えないでしょう。 孔子の道徳で支那は救われたんですよ。 いまでも『論語』の影響はたいしたものです。日本でも西洋文化が入る前までは『論語』によってどれくらい裨益されたかは判りません。孔子なんかは決して弱者ではない、強者ですよ。思想の力というものは強いものです。その点から言えばマルクスも強いですね、共産主義を今日ほどに発展させたのだから。……共産主義にもいいところがあります。もし共産主義がなかったら資本家や地主はどれくらい他の人々を苦しめ悪いことをしたか判りません。ただ共産主義が天下をとっては困りますが……

 四、五年前までは楠木正成や吉田松陰なんかはすばらしい正義だったのですが、いまではそれは戦犯のごとく悪なのです。だから正義とか悪とかは時代によって違ってくるのです。従って時代によっても変わらない孔子やキリストの教えはたいしたものです。

「『御光話録』(補)(年代不詳1951頃)、岡田茂吉全集講話篇第一巻p」 昭和23年12月28日