昭和二十三年十二月二十八日御講話(10) 光録02

〔 質問者 〕孔子の正義を貫く行動の弱さがその生涯の不遇を招き、支那民族をも弱くしたのではないでしょうか。

 孔子のため支那民族が弱くなったとは言えないでしょうね。孔子の道徳で支那は救われたんですよ。いまでも論語の影響はたいしたものです。日本でも西洋文化が入る前までは論語によってどれくらい裨益されたかは判りません。孔子は決して弱者ではない、強者ですよ。……思想の力は強いものです。その点から言えばマルクスも強いですね。共産主義を今日ほどに発展させたのだから。共産主義にだっていいところがあります。もしあれがなかったら資本家や地主はどれくらい人々を苦しめ悪いことをしたか判りません。ただ共産主義が天下をとっては困りますが、……四、五年前までは楠木正成や吉田松陰なんかはすばらしい正義だったのですが、いまではそれは戦犯で判るように悪なのです。だから正義や悪は時代によって違ってくるのです。従って時代によっても変わらない孔子やキリストの教えはたいしたものですね。

「『御光話録』二号、岡田茂吉全集講話篇第一巻」 昭和24年01月08日