岡田先生療術上(五) 【嗜眠性脳炎、脳膜炎、脊髄】

 嗜眠性脳炎の原因としては、毒血ばかりでなく、膿も混っております。ですから、脳溢血とは全然違う。

 脊柱の頂部から三分の一辺に、大抵の人は多少膿が滲出しているもので、その酷いのが脊髄カリエスであります。

 脊柱を見ると、そういう人はその個所が窪んでいる。その部を叩くと痛みがあります。これはその所から絶えず膿が滲み出て発達しないからであります。

 よく骨が腐ると謂いますが、腐る事は決してないので、膿が外部へ排泄されようとして骨に細い孔を沢山穿けるのであります。

 本療法によって膿が溶解消失すれば孔は塞がるのであります。

 カリエスの膿は非常に多い人と少い人とあります。化膿性肋膜炎、化膿性腹膜炎なども之が原因であります。又腫物や痔瘻などもそうであります。

 この原因の又原因としては、人間の祖先の罪穢が霊的に脳の中枢へ流れて来、それが物質化して膿になるのであります。

 膿が出てる時は宛かも上へ出ようか下へ出ようかと考えている様なものであります。

 その時頭脳を過度に使用したり、又夏の天日に照らされたりすると上方へ昇ってゆく、すべて膿は神経の集注する個所や、熱した所へ集溜するものであります。

 それについて以前私が治療した患者で、眼病で医師から「よく蒸せ」と言われたので、毎日毎日蒸した所、膿が全部眼球へ集中し、真白な膿で眼が塞がったのであります。これは蒸し過ぎた為に付近の膿が全部眼球へ集溜したので、その猛烈な症状には驚いたのであります。実に物凄い程でありました。

 で、膿が上昇して小脳へ入ると非常に眠くなる。これが嗜眠性脳炎であります。

 又世間には偶に、いくら寝ても眠い人がありますが、これは前述と同じ症状で、僅か宛膿が小脳へ入ってゆくのであって、謂わば極軽い嗜眠性脳炎であります。

 又小脳までゆかずに、その一歩手前で滞溜する場合があります。これが脊髄膜炎であります。嗜眠性脳炎によって小脳に迄侵入した膿は、図の様な経路をとって排泄され治癒されるのですから、回復時は目脂や鼻汁に血液が混入してウンと出るのであります。

 この病気で死ぬのは、どういう訳かといいますと、患部を氷冷する為で、その為に膿が排泄され損ねて脳内で固まってしまうからであります。
以前、脳脊髄膜炎を治した事がありますが、十位の男の子で熱がどうしても冷めない。で、後頭部の中央を触るととても熱い。そして圧すと痛がる。子供もそこを気にしているので、そこを浄化し始めたら順調に全治したのであります。

 これがもっと進んで頭脳の中へ入ると、脳膜炎又は嗜眠性脳炎になる訳で、脳膜炎の方は膿が悪性で、嗜眠性の方の膿は毒血との混合で弱性であります。

 脳膜炎など罹りたてに来れば必ず治ります。以前医師に見放されて一週間も昏睡状態を続けた脳膜炎の五歳の男子の患者を元通りに全治した例があります。
 
(昭和十一年七月)

「『岡田先生療病術講義録 上巻(五)』,岡田茂吉全集著述篇第二巻p239」