岡田先生療術上(五) 【患者取扱】

 今晩からいよいよ個々の病気の事に就ての御話になります。
  
    患 者 取 扱

 その前にまず最初、患者を扱う上に於て参考になる事をお話致しますが、医者の方では大体打診、聴診及び五指の圧診であります。

 聴診の方は音を聴く訳で大体肺病のラッセル(ゼーゼーした音)などを聴くには都合よく打診の方は肋膜に異常があるかどうかを診る等が重で、叩いてみて音がカンカン言えばいいが、水が溜っているとボクボクという音がするのであります。

 又、お腹を手や指で圧すのですが、吾々の経験から言うとこの圧診が一番良いので、これはお腹ばかりでなく何所でも圧診する必要があります。何故なれば、例えば腹膜炎などの場合、その原因は多く腎臓や肝臓にあるのですから、この肝、腎の部を圧して病原を発見するのであります。本療法に於ける病原発見は実に正確であると思います。

 しかしここで心得置くべき事は、取締規則に依れば、療術行為者は病気診断は出来ない事になっている。只患者の苦痛である個所を治療する丈しか許されていないのでありますから、それらの点を充分心得て善処されたいのであります。

 私等が新患者に対する場合、まずイキナリ額へ手を宛てる。そして熱ければ必ずそこに毒血がある証拠です。そういう人は頭が重いとか、眩暈がするとかいう症状がある。

 次に、両方の顳?へ手を宛てると熱い。斯ういう人は必ず頭痛がするのであります。

 次に、眉毛の部を押してみて痛い人は毒血がそこに溜って居て眼に異常がある。

 上瞼を押して痛い人は確実に眼病になっている。それは眼球に毒血が溜結しているからであります。
 
 まず、病原発見は斯ういう工合なのであります。

「『岡田先生療病術講義録 上巻(五)』,昭和十一年七月,19360700,岡田茂吉全集著述篇第二巻p225」