岡田先生療術下(四) 【腎臓疾患】

 腎臓というものは「物を洗う水の働き」をするものであります。

 それで、心臓が熱を吸収して毒素を燃焼すると灰が出来るから、その灰の如なものを水で洗って流す。--それが腎臓の役目であります。ですから、毒物に中ると、非常に下痢をしたり、小便が沢山出る。その際尿は、腎臓が洗った汚水であります。

 昔は腎虚などと謂って、精液を造る器械といったものですが、その補助はするが、作り出すものではないのであります。

 それで、大熱の出た後などはよく腎臓病を起しますが、それは心臓熱で燃焼した灰が尿に混って出るので、これを蛋白といい、病気と思うのでありますが、実は浄化作用の残渣であります。

 牛乳を飲むと蛋白が少くなるというのは、腎臓を弱らすから、洗う力が少くなるからであります。

 又、チフスや猩紅熱、扁桃腺炎の後など、よく腎臓が悪くなると謂いますが、これは腎臓が悪くなるんではない、ヤハリ病素の洗い渣が蛋白となって出るので、非常に結構な事なんで、間もなく治るのであります。これ故に蛋白の出るのは決して悪い意味ではないのであります。

 腎臓は、そういう訳で、水の方の浄化作用の役目で、心臓は火の方の浄化作用の役目であります。ですから、心臓と腎臓は、重要な夫婦役になります。それで、心のシに濁りを打つと腎のジとなっているのも面白いと思うのであります。

 又こうも言えます。心臓は火、肺は空気、胃は土、腎は水の役であります。又、腎臓と肺臓が水で、心臓と肝臓が火の役とも言えるので、又、心臓が霊で肝臓は体、肺が霊で、腎臓は体とも言えるのであります。

 腎臓病にも種々あります。腎臓結核、萎縮腎、腎盂炎等であります。

 よく萎縮腎を腎臓結核と誤られます。

 本当の腎臓結核は、右か左かどっちかの内部に水膿が溜結し、それが化膿して痛みを有つのであります。

 そうして、普通は膀胱へ移行するもので、非常に悪性で、小便に血液が混るのであります。

 そうして、膀胱結核から摂護腺、睾丸へ迄移行し、最後に到って睾丸はびらんするのでありますが、こうなれば間もなく死に到るのであります。

 又腎臓をよく手術によって剔出しますが、多くは予後不良であります。

 次に、萎縮腎は、水膿溜結が腎臓を圧迫するので、腎臓は充分の活動が出来ないので、その為尿が溢れる、その尿が毒素となり、又は浮腫になるのであります。

 この診査は、腎臓部及び付近を指圧すれば必ず痛む個所があります。そうしてこの溢出した尿中の毒素を医学では尿酸と謂いますが、私はこれを尿毒と謂っております。

 独逸のある学者は「万病は尿酸が原因である」とも謂っています。今もこの説は相当認められておるようであります。
 リョウマチスで、赤く腫れないのは此尿毒が原因であります。私はこれを腎臓性リョウマチスと言っておりますが、非常に治り易く、この尿素は割合に弱性で、溶解し易いものであります。

 尿毒というものは、あらゆる病気になります。よく腎臓が悪くて肩が凝る人がありますが、これは矢張り、尿毒が肩へ集る人であります。
 足が重倦く痛む人など、皆この尿毒が下の方へ垂溜する為であります。
 最も多いのは、尿毒が腹膜へ溜るので、そしてその所で凝る。これは、腹部を圧すと必ず痛む所がそれであります。
 この尿毒は肋膜炎、肋膜、喘息の原因となる事もあります。ですから腎臓の為に喘息を起し、喘息の為に心臓が起るんですから、間接には、腎臓が心臓病の原因になる訳であります。

 腎臓の原因で脚気と似ている症状を起す事もあります。これは割合多いので、あるいは真の脚気より多いかも知れないと思う程で、足が重く腫れたりなどして、脚気の如な症状を起しますが、脚気とは全然異う。私は之を“腎臓脚気”と言っております。

 腎臓の周囲へ水膿が溜結すると、浄化作用によって発熱する。之を腎臓炎又は腎盂炎と言います。

 腎盂炎の症状は、腎臓部の痛み、腫れ、発熱等で、又特徴として脚力が無くなり、歩行不能になるのでありますが、これは頗る治り易く、普通二・三回位で全治するのであります。

 本療法によれば、腎臓に関する疾患は非常に治り易いんで、殆んどの腎臓的疾患は百パーセントの治癒率であります。

 糖尿病は、甘い小便が出るとしてあります。症状は、疲労感と、喉が渇くのと、尿の排泄多量と、尿意頻繁とであります。又、歯の脱落も特徴であります。
 この病は、患者自身の発見ではなく、医師に言われて知る人が大部分であります。
 
この病の人を診査しますと、必ず胃から肝臓、腹膜にかけて水膿溜結があるのであります。そういった器能が一帯に圧迫されるのが原因であります。

 特に、肝臓部が割合に酷いのであります。

 膿結を溶解するに従い段々治ってゆきます。割合治りいい病気であります。

 治癒の状態は、喉が渇くか渇かぬかで最もよく判るのであります。又、夜中に小便に行かなければ治ったとみても可いのであります。

 尚医師で尿の検査をすれば確実であります。

「『岡田先生療病術講義録 下巻(四)』,岡田茂吉全集著述篇第二巻p300」