岡田先生療術上(二) 【肺結核増加の原因】

 風邪が解熱剤其他の物的療法によって、一旦解熱したように見えても、実は水膿溜結はそのまま残されたのであるから、人間の浄化作用は再び発熱によって溶解しようとするのであります。且つその後に幾分加わった膿と相俟って発熱は漸次執拗を増すのでありますが、再び解熱法をするので、この如き事を繰返すに従って、容易に解熱しなくなるのは当然で、そうなった症状の場合、それは肺の初期といわれるのであります。そうして、右の膿結の為に、その後に発生した水膿は頚部付近へ集溜し難くなる。それは水膿なるものは、排除される可能のある個所へは集溜するが、固結して排除不可能になった個所へは集溜しなくなるもので、自然は洵によく出来ているのであります。

 この理によって水膿は、漸次胸部の辺に停溜する事になるのであります。そうして人間は常に腕を使う関係上、どうしても両胸部特に乳部へ神経が集注されるから、その部の肋骨に膿結するのであります。ですから、そういう人の肋骨を圧すと必ず痛み、又微熱もある。聴診器を宛《当》てると、ラッセルも聞え、レントゲン写真を撮れば雲状態も映るので、実に結核らしく思われるのですが、事実此時は、肺に異常はないのであります。
 女は乳の辺へ溜るので、それが「《しこり》」となって、乳腺を圧迫する。それが為、そういう人は子供を産んでも、乳の出が悪いのでありますが、それを解くに従って乳が出て来るのであります。

「『岡田先生療病術講義録 上巻(二)』,岡田茂吉全集著述篇第二巻p190」