岡田先生療術下(二) 【中体の上部・中部 肺炎】

 これはよくある病気ですが、診査も至極簡単であります。

 肺臓の下部即ちちょうど「乳の下」に当る個所、そこへ膿が溜る。即ち「痰」が溜るんであります。

 手をあてると「乳の下」だけが特に火のように熱いので、すぐに判るのであります。

 症状は、喉がぜい・・いって、咳と痰が非常に出る。熱は四十度前後であります。

 原因は浄化法の最も急激徹底したもので、要するに「風邪の重いもの」と思えばいいのであります。ですから、肺炎は寧ろ健康の人に起ります。つまり“健康だからおこる”訳です。

 まず、大浄化法が行われる訳で--
 「風邪」の熱で溶解された--頚部及び肩部の膿が、胸部一帯に氾濫すると、その重味によって一旦肺の下部に溜る。そして尚も熱を以て溶解され、痰になって肺胞を通過して出るのであります。

 それで喘音のあるのは、肺に痰が滞溜している為であります。

 右の方が鳴る時は右肺、左の方が鳴る時は左肺に痰があるのであります。

 治療の場合は、乳の下の浄化をやればとても簡単に治るのであります。そして間もなく平熱になるのであります。

 肺炎を平熱にしようとして、一時間位治療すれば一回でも治るのであります。

 私は肺炎の患者を働きながら一週間で治した事があります。

 肺炎から喘息になる場合がよくあります。それは--肺炎の時、解熱剤を使用する為、溶け損ねた痰が下降して、喘息部に滞溜するからであります。

 肺炎が拗れるのは、解熱法の為であります。肺炎の痰が溶解され損ねるから、外部へ排泄する力を失い、肺臓の中途で停滞するからであります。

 こういう人は、非常にラッセルが聞えるので--肺結核の進んだように思われる事がよくあります。

 この痰は、一旦浄化作用をされた痰ですから、非常に溶けやすいのであります。

 肺炎が治ったと思っても、未だはっきりしない人がある。そういう人は「乳の下」がやはり熱い。そこに残っている訳であります。

 肋膜肺炎というのがありますが、これはやはり、膿が下部へ溜ったのが溢れて、幾分肋膜へ滲出するからであります。

 これも治癒は非常に速かであります。

 小児にも多いんで小児肺炎といいます。                
                        

(昭和十一年七月)

「『岡田先生療病術講義録 下巻(二)』,岡田茂吉全集著述篇第二巻p282」