岡田先生療術下(四) 【腸疾患】

 腸疾患で一番多いのは盲腸炎であります。

 盲腸炎は、本療法では実に容易に治るのであります。

 場所は丁度、臍の一、二寸下から右の方へ寄った所で、医学で謂う虫様突起部で、これへ膿が急激に集溜するのであります。

 症状は、非常に痛んで熱が出る。

 普通手術によって、虫様突起及び膿を除去しなくては生命が危いとしてありますが、本療法では驚く程速かに治ります。大抵二、三回で綺麗に治るんであります。

 そうして何の為に膿が盲腸へ集溜するかといいますと、浄化作用によって、便通で排除されようとする膿が一旦盲腸に滞溜するのであります。そうして一層排除し易からしめん為、高熱で溶解するので、溶解膿が下痢によって排除されるのであります。

 この様な訳ですから、自然療法で安静にしておれば、一週間位で確実に治癒するのであります。世人はこの事を知らないから心配して手当などする。特に氷冷しますと膿がそこへ固まってしまうので治癒困難になり、生命の危険さえ生ずるので、止むを得ず切開除去しなければならないようになりますから、手当をするなら寧ろ温罨法の方がいいのであります。

 次に最も多いのは、腸カタルでありましょう。これは大腸カタルと小腸カタルとあります。大腸の方は重く、小腸は軽いのであります。

 原因としては、二種類であります。一は、自然浄化作用に因って、膿が下痢となって排除される場合と、一は、毒物を食った為の中毒作用であります。ですから、毒物を食った覚えがなくて下痢するのは、浄化作用に因るものと思えばいいのであります。

 本療法によれば普通一、二回で治ります。

 この外に長く肺を患い慢性下痢になったのは別で、喘息及び腹膜炎腎臓炎、腎臓等の水膿溜結を溶かすと下痢する事があります。

 よく腸炎という事を謂いますが、腸に熱がある場合は、その所に毒素があるので、浄化作用をやれば順調に治ってしまいます。

 次に、腸窒扶斯は、私は未だ治療した事はありません。何故なれば、あれは腸へ熱を持つのが最初ですが、その時治療すると速に熱は去くなるから、腸チフスになるかも知れぬものでも、それで治ってしまうらしいのであります。

 又、本当にチフスになったものなら、病院へ入らなければならないから、私の方へは来ない訳であります。

 そうしてチフスには、パラチフスと普通のチフスとの二種あります。

 パラチフスは、軽症で発疹があるのです。チフスは熱が高いのが特徴で、四十度以上の熱が一週間以上も続く、そしてたおれるのは腸出血の為であります。

 これの原因は、腸の内壁の粘膜に黴菌が繁殖して微小な孔を穿ける。その孔へ固形物が触れるから発熱し、重症になれば、穿孔が進んで出血するというのであります。

 この医学の説明は本当だと思います。

 この病気は、医療に於ても、無薬で、流動食のみで自然療法をしますが、この方法は確実で成績も良いのであります。

 次は腸癌ですが、これは直腸に出来易く、直腸から大腸等へ移行して相当大きなものになる場合があり
ます。

 絶対治り難いとしてありますが、本療法で非常に治り易いのであります。軽症で一ケ月--重症で三ケ月位であります。

 医学の方では、腸癌を手術する場合は、肛門から孔を穿けて、そうして閉塞させ、人工肛門を横腹等へ付けるのですが、そこから始終糞が出て、実に悲惨極まるもので、とても臭くて側へも寄れぬのであります。

 次に、悪性の腫物が腸内に出来るのがあります。

 癌とよく似て、医学では肉腫といっております。これも非常に治り難く、ほとんど不治とされてありますが、本療法によればやはり腸癌と同じく順調に治るのであります。

 腸結核は、慢性下痢症で、無痛と有痛とありますが、衰弱が少なければ、容易に一、二週間位で治りますが、衰弱の甚だしいのは治癒困難の場合があります。

 腸結核は、肺結核の末期に多いので、腹部を触ってみると非常に熱い。

 肺結核と併発性のものは、特に不良であります。

 腹膜炎

 これは、水が溜るのと、膿が溜るのと二種あります。この点丁度、肋膜と同じようであります。そして膿が溜る方がズーと治りいいんであります。膿の溜ったので随分酷いのがありますが、割合順調に治るのであります。

 そうして今日、大抵の人は極軽い腹膜炎に罹っているものであります。それは臍の周囲を圧してみて痛くないという人は滅多にありません。そこの痛い人は必ず腹膜へ膿が溜って固まっているのであります。

 水の溜るのは、早期ならよく治るんですが、相当日数を経たものは、容易に治らないのであります。

 原因としては、肝臓の周囲へ水膿溜結し、その為、腎臓が圧迫されるから、尿が溢出して腹膜へ溜るのであります。相当溜って時日を経過したものは、深部が化膿して固まっているので、斯うなったのは殆んど不治とも言うべきであります。

 そうして、最も悪性なのは、肝臓癌が原因での腹膜炎で、不治であります。ですから、腹膜患者は、肝臓部が痛むかを査べる必要があります。押してみて痛めば、肝臓からの腹膜炎であります。

 肝臓が尿素を腎臓に送る場合、癌の為、腎臓への送流を遮られる結果、肝臓から直接腹膜へ尿素を溢流するのでありますが、腎臓からの尿は稀薄ですが、肝臓からのは濃厚である。それが為重症である訳であります。

 又利尿剤を続用したものは逆作用が起っておりますから、非常に執拗で治り難いのであります。

 腹膜炎は、よく肋膜炎を併発する事があります。又肋膜炎から腹膜炎に移行する事もあります。

 腹膜のひどくなったのは随分大きくなります。臨月の腹の大きさよりもっと大きくなります。よく破れないと思う位であります。

 又、卵巣が腫脹して、腹膜炎と同じような症状になります。これの悪性は極端に膨脹し、終に破裂する事がありますが、破裂すれば、汚水が排泄されて速かに治癒するのであります。

 この際医療による切開法も効果があります。

 腸痙攣

 これは、腸が非常に痛む病気で、これは物に中った場合と、水膿溜結が腸の蠕動と触れ合って痛むのとあります。後者は、胃痙攣の場合と同じ様なものであります。

 軽症は一、二回、重症は一ケ月位で全治します。

 赤 痢
 これは、浄化作用の最も激しいもので、赤痢で下る血は皆毒血なんであります。浄化作用ですから非常に結構なんであります。
 その証拠には実に治りいい。私はどんな酷いのでも五日を越した事はありません。
 六日目には飯を食って歩く位であります。浄化作用ですから下る丈下れば治るに決っております。

 コレラ

 治療した事はありませんが、赤痢と同じ様なもので、今一層激しい浄化作用と思います。
 勿論、コレラ菌に誘発されて、毒素排除作用が起るので、大浄化作用なのであります。
 赤痢もコレラも、伝染病ですから取扱ってはならないものでそういう疑のある患者は、即時、医師の方へ渡さなければならないのであります。

 腸 撚(ちょうねじれ)
 これは、腸が撚れると謂われていますが、非常に痛む。そして水一滴飲めないのであります。腸が撚れるので、その為、腸穴が塞がるからで、一週間以上も飲まず食わずで苦しみ、終に倒れるんであります。

 これは助からぬとしてありますが、本療法では一週間以内で容易に治るんであります。
 これから下体の上中下及びその他の病気について御話致します。

「『岡田先生療病術講義録 下巻(四)』,岡田茂吉全集著述篇第二巻p304」