岡田先生療術上(一) 【(一)日本式医術】

 本療法は「指圧療法」という事になっていますが、別な言葉でいえば「霊医術」又は「日本式治療法」又は「浄血療法」とも言えるのであります。

 何故そういう医術が生れたか--という事からお話致します。其前先ず、今日の重なる医術療法を一瞥してみましょう。

 医術としては、今日迄世に行われた処のものは、漢方医学が最初で、次に「西洋医学」が渡来し、現在に到ったのは、何人も知る処であります。

 抑々、森羅万象一切のものは「日月地」が根本であって、即ち「火水土」の性能を享けており、一物たりとも之に外れているものはないのであります。従而、医術と雖も、此三つの系体がチャンと当嵌っているのであります。

 之を記してみますと--
 漢 方  土の医術
 西 洋  月の医術
 日 本  日の医術
        --斯ういう理であります。

 然るに、本療法は、右の三項目中「日本医術」即ち「日の医術」に相応するのであります。
 それで、今日迄は「月」と「土」の二つの医術のみでありましたが、愈々「日」の医術が創始される時となったのであります。
 
漢医方は--
 「土の医術」で、「胃を基本」としますから「土から生れた--草根木皮」を薬とし「食養生」との二つで治そうとするのであります。
 即ち「土」は「物質の生産者」であり「胃」は「物質専門の器官機関」で実によく相応しているのであります。

 西洋医学は--
 「月の医術」で、即ち「夜」に相応し「肺を基本」にしたものでありますから、「肺疾患」に、最も、関心を有っており、それが為に「空気」に重点を置いている事は、御承知の通りであります。

 そこで、今度生れる--
 日本医術--即ち本療法は--
 「日の医術」で「昼」に相応し、今迄の医術で閑却され勝ちであった“心臓を基本”として成った医術で、「霊気」を主としたものであります。
 此事を先生は「内臓の三位一体」と申されております。
 分界的にいうと、左の様になります。

 胃 土 現実界
 肺 月 空気界  三界
 心 日 精霊界
 仏説にある三界とは此事を指したのであります。
 又本質的にいえば、左の如くであります。
 胃  物質である  現象は土の性
 肺  水精である  空気は冷の性
 心  火精である  精霊は熱の性

 「日 月 土」を、人間の精神的性能に当はめてみれば、一番よく解るのであります。それは太陽が一番上になり、その次が月であります。

 恰度「経の三段」になっているのであります。それですから、どうしても、「月の西洋」「土の漢方」の医術の上に「日の医術」が加わらなければならない道理であります。

 之によって初めて「完全な医術が出来て病無き世界が実現される」と思うのであります。

 次に、今一層徹底してみますと--
 鈍重   土
 理智   月
 情熱   日--となるのであります。
 土の医術(漢方)は--独善的で、経験を主とし、余り研究や理論に重きを置かず、専ら伝法固守であります。
 月の医術(西洋)は--理性本位で、学理が基調となって、科学的研究は、非常に発達しているが、実際的方面は第二義的であります。
 日の医術(日本)は--心精的で、精神力を主とし、根源抜除的で、飽迄霊的であります。
 空気の構成は、酸素、水素、窒素となっておりますが、実は「水素」が主体であります。
 土 物 窒素
 月 気 水素 此三位一体が「三素」即ち、酸素であります。
 日 霊 火素(酸素)

 そうして特に、日は「三素活動の主体」であって「三位一体」のその「一体」--であります。

 然しながら今日迄は、大体「土」「水」--此二素が判っていたばかりで火素即ち霊素は判っていなかったのであります。

 右の事を、別の方面である--歴史的に思索してみますと--

 今日迄、日本が世界から認められていなかった。「日の本」が隠れておった--のと同じ理であります。

 今や日本文化が独特の内容と形態をもって世界の表面に出ようとしている。事実それは其時が愈よ来たのであります。

 そうして、それが日に月に濃厚の度を増してゆく。勿論それは、凡ゆる種類に渉ってでありますから、医術と雖も、日本的な素晴しいものが生れなければならないと思います。

 そうして、それは根本として「精神が主で、物質が従である処の、霊医術否、両々合致したる理想的治病法」でなくてはならないと思うのであります。

 世に“神仏の力”というものが実在するとすれば調和力(平均のとれた力)で、森羅万象が一厘の毫差なく運行し、万物の生成化育が、順調に進展する--というような力のそれでありましょう。

 然るに、未だ人類社会は、諸々に調和を欠いている。世が乱れ、病者が充満するというのは、それを如実に物語っている--と思うのであります。そして乱れの末は破壊となり、病気が進めば不幸を招来するのであります。どうしても其根元に「調和力即ち和の力」が足らないからだと思います。そうして世界中、日本位調和力を保有している国は無いので、それは東西の凡ゆる文化を吸収して、そこに何等不消化的錯誤のないにみて明かであります。
 土 黒色人
 月 白色人  であります。
 日 黄色人

 然し--日の人種の中にも「黄金色、青金色、黄色」と--「上」「中」「下」がありまして黄金色が日本人で、次で、朝鮮人、支那人という順序であります。

 階級的に之をみますと--
 黒色人 下
 白色人 中  であります。
 黄色人 上
 鉱物的にみますと--
 太陽  日  金色
 太陰  月  銀色   であります。
 大地  土  銅色鉄色

 そこで「日、月、地」--は、どうして「上、中、下」であるか--という事の説明は、何より「日蝕の現象」を--

 此様に「緯の三段」になって、之が密着不離の関係であるんであります。ツマリ「経緯の三段」--六合が実体であって、哲学的にいえば六次元であります。

 茲に、人間の肉体があるとすると--

 骨、筋、肉、皮等の物質体は--「現象界」に呼吸し
 それと同一の形態である--水素質のエーテル体が、「空気界」に呼吸し、
 又、それと同じ精霊体が、--「精霊界」に呼吸しているのであります。

 故に、右の理によって「病気の根本」は其精霊体にあるのであるから「精霊体そのものの病」を治さなければ、肉体の病気は絶対に治らないのであります。

 然るに、今日迄の精霊界は「月素」が多分で「日の霊気」即ち「火素」が欠之していた。言葉を換えれば、光と熱が少く、夜に相応していた。それが為に「病気の発生」が多かったのであります。何となれば、その病気発生の根源は有形無形の罪穢の堆積--であるからであります。

 そうして、その罪穢とは、人間が悪に染まるからで、それが一種の曇となって、人間の精霊体に積るのであります。

 そうして、夜の暗さは、どうしても、悪の発生に、都合がよいのは、申す迄もありません。

 然るに、此病気の本源である、曇、それを人体の自然浄化作用、払拭しようとする、その苦痛が病気であり、その曇が多量過ぎて、肉体が浄化作用に堪えられぬ場合、若しくは、誤れる治療によって浄化作用が遅延し其為の衰弱の結果が、死を免れない事になるのであります。
 人間の精霊は精霊界に属しているのは前述の通りでありますが、精霊の中心に心があり、心の中心に魂があるのであり、殆んど之は、求心的に三段になっているのであります。従而、其中心に位する魂は健康に重大な関係があるのであります。然乍ら、人間は肉体を有っている以上霊気ばかりという訳にもゆかないので、火の霊と水の霊と物質との--三位一体が完全に調和活動して、真の健康と長寿を得らるゝのであります。

「『岡田先生療病術講義録 上巻(一)』,岡田茂吉全集著述篇第二巻p155」