昭和二十九年ごろ、当時ある道具屋さんで列車が遅れて、明主様との約束時間より五分遅れたんです。本人はちゃんとまに合うつもりで出て来たんですが、汽車が延着したために、息せききって五分遅れてきたんです。
明主様は、いつも自分の時計を必ず五分進ませておかれましたから、自分の時計が五分前の暗から体制を整えておられるんです。ところが、その人が五分遅れて来たものですから、全然会われないんです。ですから、実はこうこう、こういう理由で遅れたんです、と申し上げたんですが、だめなんです。どんなに取次いでもだめなんです。
『ほんとうに私が忙しい身体であるということを知っていて、誠をもって私のところへ来たものなら、五分や十分遅れたことに、私は文句は言わないが、十分なら十分、延着するということを見越して出て来るのが本当の誠だ。だから改めて約束しなおそう』ということで、その日は三度ぐらいやりとりしたんですが、とうとう、お会いしていただけなくて帰っていただいたことがあります。