『腐ってないか』

 上野毛のころ、明主様は、クサヤの干物がお好きでしたが、千葉の人が明主様のところへ、クサヤの干物を送ってこられました。

 奉仕者が、「クサヤが届きました」と明主様に申し上げに来ました。

 ところが、明主様は本を読んでおられて、黙っておいでになるのです。

 私はそのお側にいて、“本など、あとで読まれればいいのに”と思っていました。

 すると、その奉仕者は、「いかがいたしたら、よろしいでしょうか」とたずねました。

 明主様は、『ウン、それは腐っていないか』とおっしゃいます。

 私は失礼なことをおっしゃるものだと思いました。
 「ハア?」──と奉仕者もケゲンな顔をしています。
 『それは腐ってないかと言っているのだ』と明主様は強くおっしゃいます。

 奉仕者が、蓋をあけてみたら、カビが生えていました。

 これは、昭和十五年のころで、たしか夏でした。