昭和二十一年のことですが、観山亭の土台が出来、柱も立ち、屋根を葺く段取りになりました。
その日は、葺き始めてから三日目ぐらいでした。あと四、五十センチで、全部を葺き終わるという時、空が急に暗くなって、真っ黒な雲が現われて来ました。
「困っちゃった。降らないうちに葺き終えてしまわないと、柱にシミがついてしまうう。明主様になんとか申し上げて下さいよ」と屋根屋はあわてています。
「そうか、ではちょっと待ってくれ。明主様に申し上げてくる。だが、あと葺き終わるのに、時間にしてどのくらいかかるのか」
「三十分か四十分です。だが、一時間をみていただきたいです」と屋根屋。
私は早速、側近奉仕者を通して、このことを明主様に申し上げました。
明主様はかけ出して見えました。
『どうしたんだ』
「実は、いまにも雨が落ちて来そうで……」
『よろしい。どのくらいかかる?』
「あと一時間あれば葺き終われます」
『うむ、しかし、ギリギリにして、どのくらいか』
「四十分です」
『そうか』と明主様はおっしゃって、五分ぐらい空を見上げられていましたが、(五分と思ったが、ほんとうは二、三分だったでしょう)『これでよろしい。早く葺いてしまいなさい』と言われました。
ふたりの屋根屋が、いそいで全部を葺き終わり、そして梯子を降りようとした時、凄い抜けるような雨です。大豆ぐらいの雨足です。
私は入信したばかりで、半信半疑で、明主様が天の一角をにらまれたが、果して大丈夫だろうかと思っていましたが、観山亭のまわりだけが降っていないのです。そして、その先は大雨です。私は全くびっくりしてしまいました。