昭和二十五年から春と秋と年二回、関西地方へのご巡教が始まりました。
これは教勢の発展に伴い、地方の信者さんに会われるのと同時に、京都、奈良で古美術をごらんになるために行われるものと存じますが、法隆寺へは二十六年の秋に初めてご案内いたしました。その時は、先生方や信者さんはだれもお供を許されませんでしたが、明主様は大変お喜びになられ、あげくにご冗談にか、『この寺はすばらしい。立派なものだ。これを買おうじゃないか』とおっしゃられたのは、さすがの私も返事にとまどってしまいました。
後日、この話を、先年亡くなられた小林二二さんが箱根にいらした時にしましたら、「そりやわかる。私もほしいと思った」と言われましたが、大きいことをなさる方は、そのくらいにお考えになるのだろうと思いました。