ほんものでも保存が悪ければ

 私の親類に、仁清の作品を四点持って自慢している者がありました。明主様に申し上げましたところ、見たいとのお言葉で、箱根に持参いたしました。昭和二十七年の夏でした。

 明主様はひと目ごらんになるなり、そのうちの三点はほんものだが、他の一点は贋物だとご鑑定になられました。

 そこで、そのほんものがお気に召すなら献上いたしたいと、親類のものが申し上げましたところ、明主様は、『ご好意はありがたいが要らない。私のところにはもっといいものがあるから見せてやろう』と、わざわざお取寄せになって、見せて下さりながら、『美術品はほんものでも、保存が悪いと私はとらない。もっと大切にすることが美術愛好家のつとめであり、作者に対する尊敬である』と御教えいただいたことがありました。