火箸をもってチャンバラの格好

 ある時、御書体をお書きになりつつ、ラジオの漫談(山野一郎、歌舞伎猛優伝)をお聞きになってから、『いま、沢田正二郎をやっていたね。私が沢正の芝居を見て、一番心に残っているのは、幕末の志士の出し物だったけど、沢正が人を斬る場面があってね、サッと刀を抜いて人を斬る。それが実に早かった。よく、映画などでは、こうやって(火箸を二本おもちになって)長いことチャンバラをやってるけど、実際にはあんなことないんだ。沢正のやり方は、悠々としていて、斬る時にはサッと斬る。あの時の姿が、いまでも目に残っているね』とおっしゃいました。

 もちろん、お筆はもうおいてしまわれて、左右のお手に火箸をお持ちになり、チャンバラの格好をなさる明主様。まことに和やかな春の一夜でした。あの時の明主様のお姿は、いまでも私の目に残って消えません。