昭和二十九年十二月二十二日、午後でありました。明主様に、あすの御生誕祭式典の下準備をご検分願うことで、救世会館にお出ましいただいた際であります。
“早朝参着する信者さんを寒がらせないように”との上司の意向で、会館内に火鉢数個と、椅子のないコンクリート上に、荒筵(あらむしろ)を数百枚敷く手配をし、係の者に指示をいたしました。これは、当時会館内の椅子席が未完成でしたから、非常措置でありました。
やがて、ご検分のため明主様が瑞雲郷へお出ましになりました。私はいつものように、水晶殿玄関でお出迎え申し上げて、そのまま救世会館にお供をして来ました。
会館内に五、六歩お進みになられた明主様は、荒筵の敷いてあるさまをごらんになり、厳然たるお顔つきをされて、『あれはなんだ。なんのために敷いたか』とご下問になり、『荒筵は罪人の座するものだ。御神前に荒筵は絶対いけない』と鋭くご注意をいただきました。私どもは恐懼してお詫び申し上げ、ようやくお許しをいただきましたが、『早々に取りかたづけよ』とのお言葉で、慌てて奉仕隊員を呼び、大急ぎでかたづける状態を、南面廊下の中央附近から、じっとごらんになっておられました。
しばらくして、『筵は、私の見ている前で即刻焼き棄てよ』と仰せられましたので、お焼きしました。明主様はそれをごらんになっておられましたが、『このことはだれも知らないので、神様がお知らせ下さったのだから、忘れないようよく覚えておきなさい』と繰返しお諭し下さいました。