書籍

『なぜ、おぶって来てやらぬ』

 いつか、箱根へ上がりました時のことですが、日光殿がまだ出来てない時分、観山亭で、『あそこをちょっと見に行こう』と、明主様がおっしゃったんです。  私はおぶさらなければ行けませんし、道がついていませんから行かれなかったん …

ありがたくて涙をこぼしたら

 明主様が地方巡教を一番最初になさいました時に、私の家へお迎えしたんです。  その時、家内は明主様をお迎えしたことがありがたくて、涙を出していましたら、  『奥さん眼が悪いのか』とお尋ねになられました。「いいえ」と家内が …

肩についていた一筋の髪の毛

 昭和二十七年、箱根美術館が開かれてまもないころのことでした。  私はその日、心をときめかせて、二階第四室の美術品の前で、時の移るのも忘れて見入っていたのでした。ふと気がつくと、私の周囲にあった静かなざわめきが、潮が引く …

『それで、おまえ食えるのか』

 私がこのお道に立ってからのことで、終戦直後、明主様が、まだ東山荘にお住いのころです。私も主人も 淡々としていましたので、さて敗戦となって、困り果ててしまいました。主人は戦犯で、無収入。売り食い生活をしていました。  あ …

散歩に連れ出して慰める

 たしかに明主様は江戸っ子でいらっしゃるし、人間的には男気のある方でした。これはある人のことですが、○○さんが昭和二十五年の事件の時、静岡へひっばられて帰ってきた時、“○○さんが原因でああいう事件が起きたんだ”といって大 …

『しかし途中で辛かったら』

 私は明主様のお側に奉仕していて、自動車の運転に興味を持ち、明主様の運転手である山口さんの助手をしながら免許をとりました。せっかく免許をとったのに腕を磨く機会がありませんので、この際外へ出て、なんとか修業したいと思い、意 …

優等賞をもらった時

 私は、育ち盛りをほとんど明主様のところで過ごし、始終叱られてばかりいましたが、ちょうど学校を卒業してすぐ奉仕に上がりましたので、『定時制の高校へ行ってみないか』と、明主様がおっしゃられて、二年間夜学へやっていただきまし …

女子奉仕者の洋服にも

 昭和二十九年ごろのことですが、側近で奉仕している女の人に対して、明主様は、『あなた方にはずいぶん世話になったから』とおっしゃって、洋服を作って下さったことがあります。そして、わざわざお店から取寄せられて、『あなたにはこ …

『親の前に出たと思って』

 明主様は、奉仕者に対して家族同様においつくしみ下さいました。たとえば、入浴している折とか、夜のご挨拶の終わったあと、奉仕者たちが寝んでしまってから、何か御用があってお呼びになられますことがありますが(ご挨拶後はよくよく …

腰を降ろすのも思いやり

 ある女の奉仕者が、箱根で御奉仕している時のことです。その人が、日光殿のはいって右側の部屋にいますと、明主様が、お客さまを連れて、庭に出ていらして、いろいろと庭のことを話していらっしゃいました。  そこで、その人は、明主 …