書籍

『巾着切はもう大丈夫』

 ある日、お風呂におはいりになられますとき、脱衣場で「時計をおはずしいたします」と申し上げて、私は明主様の腕時計をおはずしいたしました。  さて、いよいよお湯殿へはいられるとき、時計がないのに気づかれた明主様は、『おまえ …

ひどい悪口にも大笑い

 明主様は、歌集『山と水』に、  笑うたび 涙の出ずるくせ未だ そのままにして年重ねけり とお詠みになっておられますが、笑冠句を私が読み上げる時などは、たえずボロボロと頬を伝う豆粒のような涙をハンカチでお拭きになりながら …

『なかなかの美人だなあ』

 いつか箱根で、観山辛から美術館にお出ましの時、階段を三段ばかりお上がりになって、ヒョイと後ろを向かれて、『いま、あそこにいたのはなかなか美人だ なあ』とおっしゃられ、お目のお早いのにびっくりしたことがありました。

天狗歩きでひと廻り

 開教初期のころの思い出です。  ある時、中央亭で集まりがあって、それから映画をごらんになるというので、明主様と私とは外へ出ました。  『ほかの者をまいてやろう』と言われ、明主様は、『天狗の歩き方を教えてやる。これならだ …

火箸をもってチャンバラの格好

 ある時、御書体をお書きになりつつ、ラジオの漫談(山野一郎、歌舞伎猛優伝)をお聞きになってから、『いま、沢田正二郎をやっていたね。私が沢正の芝居を見て、一番心に残っているのは、幕末の志士の出し物だったけど、沢正が人を斬る …

タビを脱いだり履いたり

 明主様は天真らんまんでした。咲見町でお祭のあった時など、演壇のうしろに腰かけていらして、足をもぞもぞさせていらっしゃる。そのうちにタビが脱げてしまいます。足の先をもぞもぞなさるのですから…。  そしてまた、もぞもぞとタ …

うっかりとしっかり

 明主様に、「うっかりしておりまして」などと申し上げると、『うっかりしないで、しつかりしろ』と、ユーモアたっぷりにお叱りをいただいたり、『こういう時に江戸っ子だとね。機転丸、ドジ下しでものみゃがれ! と、タンカを切るんだ …

肩もみを号令で

 御奉仕中の思い出ですが、私が明主様のお肩をもんでいますと、『右、左!』『右、左!』と号令(?)をかけられるのです。それが、だんだん早くなると、私の方で、あわててしまいます。右というのに左のお肩を叩いてしまったり、左とい …

飾り気なしにものを言う

 初対面の明主様の印象についてこれはといった印象はありませんが、ともかく初対面の方に対してもズバズバものを言っておられました。別にプリプリ怒っておられたわけではありませんが、中には奇抜な質問をしたり、変なことを伺うと、だ …

『お嫁さんは来ないのかい』

 玉川時代の明主様のことを、当時小学生だった伜は、いまでもよく覚えていて、「ぼくがね、近所の女の子と一緒に治療に通っている時、たまに、その女の子を連れていかないと、大先生は、『きょうはお嫁さんは来ないのかい』なんてぼくに …