「附記」

筆ダコに涙が出た

 昭和二十九年のことです。明主様はいつものようにご調髪されたあと、私に向かって、『私の手にさわってごらんなさい』とおっしゃるので、私はなんの気なしに、明主様のお手を拝見いたしました。  明主様のお手は、柔らかで、キャシャ …

御神体を綱にかけて乾かすとは

 私が御神体の御用をさせていただいていて、明主様からお叱りを受けたことは、数え切れないほどです。  たとえば、明主様は、いつもラジオをお聴きになりながらお書きになりますが、ラジオの調節がうまく行かなくて、雑音がとれず、よ …

兵隊の部屋に大将を入れるな

 あるとき、碧雲荘におかけになる御書のお軸に、ちょっと折れが出来たのです。もちろん、その上に何も載せたことはありません。  すると明主様は、『どこに置いてあったか見よう』とおっしゃって、奉仕者の部屋にこられ、『ここは、軍 …

スリ鉢で墨すり

 私は神山荘の近くに住んでおりましたから、ときどきご揮毫用の墨をすっては、お屋敷にお届けしておりました。ところがある日、視でする代わりに、楽にやろうと思い、墨を水に浸して柔らかくし、それをスリ鉢ですってお届けしました。 …

『墨すり器とは何事だ』

 昭和二十四年ごろは、御書のご揮毫に非常に力を注いでおられましたから、私ども奉仕者がする墨が追いつかなくて、なんとか早くすれる方法はないものかと、みなで考えたことがありました。  それでいろいろ工夫いたし、硯でするのは手 …

言われたことを素直に

 “気が利きすぎてなんとやら”と申しますが、私たちが気を使ってさせていただいた時に、かえってお叱りいただくことが多かったように思います。  たとえば、ご揮毫中のことですが、明主様のお側に火鉢があったのです。ところが、だん …

極端居士ではいけない

 ある日の御書のお仕事の際、つぎのように仰せられました。  『墨の濃さは、うすいようでもあるし、濃いようでもある。濃いんだか、うすいんだか判らない、そういう濃さが一番いい。これが出来るようになれば英雄だ。普通の人は、濃い …

ちょうど、いい加減がいい

 ご揮毫の際、墨を調合させていただくのですが、『これが出来たら一人前』とおっしゃっていただいても、なかなか思うようにはまいりません。  明主様は、筆をスミにおつけになっただけで、すぐスミの濃さをご指摘になられます。『うん …

ご眼力のたしかさ

 ある時、「おひかり」の「光」の紙の大きさをお決め下さったので、その通り用紙を切って準備したのでした。  二、三日して、ご揮毫のためお出ましになった明主様は、おすわりになるやいなや、『この寸法は、このあいだ言ったのより小 …

少し御用をしすぎる

 あれは何年でしたか、ある教会から、御書体のお願いが二万体来たことがあります。  この時明主様は、約一ヵ月でご揮毫になられましたが、毎晩のことで準備が大変でしたから、私はご揮毫奉仕の係ではありませんでしたが、まに合わなく …