『バカもバカ、本バカだよ』

 大森にお住いのころ、私もしばらくご厄介になっておりましたが、その時分、お手伝いさんは三名おりましたが、なんといっても、まだご質素なご生活で、朝食など、いり玉に味噌汁、塩鮭ぐらいでした。

 そして、朝食を終わられるとお店へ出かけられる。二代様が玄関まで送られて「岡田さん(こう呼んでおられた)晩は何にいたしましょう」とおっしゃるんです。そうすると明主様は“これこれ”とご指示されました。『車海老を買って来ておけ。バカ貝を買って来ておけ』と言っておられましたが、ああいうものが好物のようでした。そして「バカ貝ですか」と念を押されますと、『そうだよ、バカもバカ、本バカだよ』と冗談を言われながら出かけられましたが、ほほえましい光景として記憶に残っております。

 一週間に一度ぐらいは、『きょうは外で食べるから、あんたも一緒においでよ』と言って連れて行ってもらいました。京橋にUSというフランス料理店がありましたが、そこがお気に入りで、よく行かれました。そして、二代様が約束時間に遅れたりされますと、『きみはまだ改心が出来ん』とあたりに人がいても平気で注意しておられました。

 二代様もよく帰宅されてから、「岡田さんといったら、人前でも平気で叱言をおっしゃるから、恥ずかしいわ」と、笑いながら話しておられたのが印象に残っています。そういう場合、二代様は“そうですか、ごめんなさい”と少しも逆らわずにすんでしまいますから、笑い話くらいで終わってしまいます。