芸術的なお顔

 明主様が、箱根強羅の藤山雷太さんの別荘をお買いになってまもないころ、私は写真のことで明主様にお目にかかりました。私は藤山さんの時から出入りしていましたので……。

 写真といっても、最初は記録的なもので、建物や庭を撮影しました。土盛りから完成まで撮ったので、言わば神仙郷の進行状態をまとめました。

 その後、明主様のお写真をとりました。東京から有名な写真家をお呼びになったが、お気に入らなかったらしく、それで私にご用命がありました。

 お写真は、神山荘の洋間をスタジオとして撮影しました。

 普通の場合ですと、出張写真のカメラはきまっているのですが、私は明主様のご意図を伺って、記念写真ではないのだからと、スタジオ用のカメラを持って上がりました。昭和二十五、六年ごろだったと思います。

 とにかく、ただ記念としてアルバムに貼っておくというようなものではなく、永く保存される教団としても大事なお写真だと思いましたので、明主様の自然のお姿を出すように苦心しました。短時間のあいだに五、六枚撮影しました。出来上がってお目にかけましたら、明主様は大変お気に入られました。

 その時、私が驚きましたことは、明主様が写真というものに深い理解をもっておられ、ご自分がただ撮されるというだけでなく、写真家の私に協力するというお心が見えました。

 明主様が、実の表現ということをよくご存じになっていられて、私は全く感服しました。

 写真家の私から見て、明主様のお顔は、彫りが深いというのでしょうか。ライトを当てても立体的に浮き上がって、ほんとうに撮りやすいお顔でした。陰影に味があって、絵画にも彫刻にもなりやすく、お顔そのものが芸術的であると申しても失礼にはならないでしょう。